香川大学工学部能見研究室における衛星開発プロジェクトのHPです。

 香川は「うどん」だけじゃない、「テザー」もあるよ。
       
 STARS-IIの明るさを予想してみました (テスト撮影用検討資料)
       

  みなさん、STARS-IIがどの程度の明るさになるのか簡易計算してみました。
ISSの明るさをもとに導いてみます。
 実際には太陽電池パネルの反射率や反射角度など条件によってかなり異なった結果が出ると思いますが、ここでは細かいことは考えないことにします。
ISSの大きさは108.5m × 72.8mです。
ですが、ISSの姿を見るとわかるように、太陽光を反射する面積は最大でその1/4程度になるように見えますので、
108.5m x 72.8m x 0.25 = 1974.7u が太陽光を反射する面積とします。
STARS-IIの大きさは0.4m x 0.2m 程度として、ほぼ全面で反射するとすると、太陽光を反射する面積は、0.4 x 0.2 x 1.0 = 0.08 uです。
したがって、ISSのSTARS-IIに対する面積倍率は24683倍となります。
これをこれを等級差に換算します。
1等の差は2.5倍の光量と定められていますので、
等級差 = log 2.5 (24683) = 11.03等
LaTeX:
[\
\log{2.5} 24683 = 11.3
\]
となります。
ISSの最大光度を0等とすると、STARS-IIの最大光度は11.3等ということになります。
 次に、親機と子機が分離した後の光度ですが、半分くらいの大きさになると思うので、光度にすると、それぞれ11.8等になります。
 70cm反射で写すと、冷却CCDカメラ SBIG STX-16803Eの最速シャッター0.12秒だと飽和しそうなほどの明るさと表現できる程度の明るさです。
 ですが、芸西の望遠鏡は衛星追尾ができないので、恒星追尾で写すとなると、デジカメを使って1/2000秒露出(1/1000秒でも大丈夫か?)くらいで写さないと流れてしまいそうです。
次に離角ですが。
親と子が、高度400kmで観測地に対して真横に300m離れるとすると、親子の離角は154 arcsec(角度の2.5分)になります。
= arctan(300 / 400000) * 180 / π * 60 * 60
芸西の70cm F7反射(焦点距離5,000mm)にSTX-16803Eを3x3ビニング(高感度モード)で写すと、1ピクセルが1.1秒角になるので、親と子は140ピクセル離れて写ることになります。
(もし、高解像モードで写すと420ピクセル離れて写ります)
 親機と子機は太陽光の反射の強さや大気の乱れによる拡散で、実際の大きさよりはるかに大きな(太い)、3ピクセル程度で写ると思います(同一光度の恒星を写した経験による)。
 したがって、3ピクセル程度の光点が140ピクセル離れて写ることになります。
 ですが、実際には観測地から見て真横に離れるわけではないのでしょうから(むしろ垂直方向に離れる?)、撮影してもほとんど離れないのだろうと予想しています。
 もし、きちんと300m離れていることがわかっている場合、撮影した画像から離角を測定すると、衛星の観測地に対する位置関係(写真からは親子の別は判読できないので解は2つになる)が計算できます。

 と、ここまで想定も想定、大想定で理屈を展開してみました。
 実際には似たような衛星でテストしないといけませんが、テストするにしてもある程度の定量的な数値がわかってないとできないので、いちおう参考のために計算したしだいです。
 皆さんももっと精度の良い計算を独自にされてみてください。
 最後に、芸西天文台で写したISSの写真を添付しますのでご覧ください。
 高度は70度程度の良い条件で写したものです。
 ちょっとピントが甘いですが、だいたいこんな感じで写ります。

  芸西天文台 下元繁男


1.装備は芸西天文台70cm F7反射望遠鏡にPENTAX K-5を付けて撮影
  ・ 望遠鏡の焦点距離:5000mm
  ・ PENTAX K-5を装着した時の画角:17' x 11'
  ・ PENTAX K-5の連写速度:1秒間に7枚
  ・ PENTAX K-5の画像保存形式:JPEGのみ
  ・ PENTAX K-5の装着したメモリー: Class10
  ・ ISSの位置を計算したソフト:PreviSat
  ・ ISO-1600, 1/4000秒露出

芸西天文台の望遠鏡は人工衛星の追尾機能がないので待ち伏せ撮影しました。

  (1) まずPreviSatで、撮影できそうな日時とその位置(赤経、赤緯)を調べる。
  (2) その方向に望遠鏡を向ける。
  (3) 正確な時計をにらみながら通過する時刻を待つ。
  (4) 通過時刻の2秒前になったら連写開始。
  (5) 通過2秒後に連写終了。

これで1フレームのみフレームからはみ出しそうなギリギリの位置にISSが写りました。
この1回だけの結果からはPreviSatの計算精度はわかりませんが、
「計算位置を中心とした17' x 11'の範囲内を通過した」と言えます。

この時は仰角70度前後の位置を通過したと記憶しているのですが、
カメラの視野を0.2秒〜0.3秒で通過したのだと思います。

軌道は進行方向に向けた誤差が大きいです。
進行方向に対して直角の成分(いい加減な表現ですが)の誤差は無視できます。ですから、導入精度が正確ならば、だいたい視野の中心を通過します。
問題はそこを通過する時刻ですが、±1.5秒くらいはあるのかもしれません。
したがって、視野に入る前から連写しないといけません。
冷却CCDカメラは高感度な点が有利なのですが、連写ができないので不向きです。
やはり、連写ができるデジイチが必要で、高感度のものほど有利です。

添付画像は連写したうち、たった1枚だけ写ったISSの写真です。

 

2.皆さま、昨年の8月9日に2回目のISS撮影に挑戦した時の状況です。

芸西天文台の70cm F7反射望遠鏡(焦点距離5000mm)に、
Nikon D700(フルサイズCMOS)を付けて撮ったものです。
視野は26' x 17'になります。

 

撮影した直後に他のMLに送った文がありましたので、それを下に示します。

----- ここから引用 -----

昨夜芸西天文台の70cm反射で写したISSとHTV4の画像です。
今回は芸西からISSまでの距離が773kmと遠くかったので見栄えのしない姿です。

なぜか肉眼ではISSが見えなかったのですが、電波時計の針が通過時刻の1秒前になったので、とにかく3秒間連写してみました(1秒間に5枚撮るモード)。
結果、1枚目、2枚目、3枚目に写っていました。

計算上の通過予定時刻より1秒くらい早く通過した感じです。
このことから今後は計算した時刻の前後2秒くらいは撮る必要がありそうです。
その場合20枚連続撮影することになるので、RAW画像が4秒間に20枚保存できる速度のメモリーを使う必要があります。
今回は保存速度が間に合わないと思ったのでJPEGだけ保存するモードで使いましたが、やはり画質の点でRAWが望ましいです。

今回はフルサイズのNikon D700でしたが、それでも画角をわずか0.6秒で通過したことになります(1秒間に5枚撮れるモードで使用)。
一瞬の出来事です。

先日PENTAX K-5(APS-Cサイズ)で1枚だけ端っこに写ったわけですが、この時は天頂付近を通過したので見かけの速度が速い上にセンサーが小さかったので、1枚写った直後には画面の外に逃げたのかもしれません(PENTAX
K-5は最大で1秒間に7枚撮れますが)。

今回学んだことは、肉眼で見えた後、モニター用の15cmの屈折の視野に入ってからシャッターを押すなんてことは必要なく、正確な時計さえあればシャッターのタイミングがとれることです。
このことは、時計とシャッターボタンにだけ集中していればよいので確実です。また脚立に上り下りする必要もないので安全です。
それに、眼視で見えないような暗い人工衛星を撮るためにも有効です。

なお、このフレームを撮った後、大急ぎで70秒後に通過する位置に向けて、秒針を頼りに連写したところ、これにも6枚写っていました。それぞれ姿が異なっていて面白いです。そのうちの1枚はいかにもISSという感じで、小さいですが良い姿に写っています。

----- ここまで引用 -----

添付画像は写っていたすべてのフレームを比較明合成したものです。

最初に待ち伏せしたポジションのものが縦方向に移動しているものです(画像の上が北)。
横方向に移動している像はそれから70秒後の位置に望遠鏡の向きを変えて連写したものです。
視野回転装置(ローテーター)がまだ回転中に連写したのだと思うので、移動方向は不明確です。

衛星の通過位置と時刻を計算したソフトはPreviSatです。

このように視野が26' x 17'あれば複数枚の像が撮れます(ただし、仰角が30度~50度くらいで、角速度は遅かったはずですが)。

以上、2回に分けて軌道の精度について、多少は役に立つかもしれない情報を投稿させていただきました。

         下元繁男@芸西天文台で観測する人




(1)Contents
TSR-S

(2)Information

(3)Links

 
Copyright © 2006-2014 All right reserved.